今回は、ラケットやカタログに記載されている重量やバランスなどの数値、テニスラケットの「スペック」について、その数値が変わるとラケットの性能がどう変わるのかを簡単にご説明します。
なお、初心者のかたがテニスラケットを購入する前に「これだけ確認しておけば大丈夫!」という3つのポイントについて、以下の記事でご説明していますので、ぜひ参考にしてください。
目次
スペックの前にラケット各部の名称についておさらい
まずは、ラケット各部の名称についておさらいです。
基準となる【黄金スペック】とは?
ラケットのスペックを比較するうえで、基準となるのが【黄金スペック】とよばれるラケットの数値です。
- フェイス:100inch²
- 重量:300g
- バランス:320mm
- フレーム厚:23~26mm前後
初心者から上級者まで幅広い人に使いやすいスペックだから【黄金スペック】!
まさに「黄金スペックの元祖」Babolatのピュアドライブの数値だね!
ラケットスペックによってどの性能に違いがでるのか
スペックそれぞれの数値が、ラケットの性能にどのような影響を与えるのか簡単にまとめました。
◎は特に関係性の高いスペックと性能です。
それでは、スペックが性能に与える影響とメリット・デメリットについて、ひとつずつご説明します。
【スペック:重量】重量で変わるラケットの性能
ラケットの重量は、主に次の性能に影響を与えます。
- 飛び
- 球質(影響大)
- 打感
- 取り回し(影響大)
「重い」メリット・デメリット
- 相手のボールに打ち負けない。
- しっかりと振ることができれば重たい球質のボールが打てる。
- パワーのある人の飛び過ぎを防ぐ。
- パワーがないと振り遅れる。
- パワーがない人は振れないため「飛ばない」と感じる。
「軽い」メリット・デメリット
- 相手のボールが強いと打ち負ける。
- パワーがなくても楽に振れ、ボールを飛ばしやすい。
- ボレー時にとっさにラケットが出しやすい。
- 球質が軽くなりがち。
- 打球時の振動と衝撃が大きくなりがち。
実際にラケットを振ったときの重量感を知るためには【スイングウェイト】とよばれる数値を計測する必要があります。
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【スペック:バランス】バランスで変わるラケットの性能
ラケットのバランスは、主に次の性能に影響を与えます。
- 飛び
- スピン
- 振り抜き
- 取り回し(影響大)
バランスの数値は、グリップエンドから重心位置までの距離を表しています。
一般的にバランス320mm程度が「イーブンバランス」とされ、
これより
数値が大きくなると(重心がヘッド寄りになると)「トップヘビー」、
数値が小さくなると(重心がグリップ寄りになると)「トップライト」
となります。
そのラケットがトップヘビーなのかトップライトなのかは、次の方法で調べることができます。
軽いラケットほど、パワーを補うために重心をヘッド寄りに設計する(いわゆる「トップヘビー」)のが一般的です。
「トップヘビー」メリット・デメリット
- 先端が重いほうがパワーが出るため、軽いラケットでも打ち負けにくくなる。
- ラケットヘッドが走り(振り抜きがよくなり)、スピンをかけやすい。
- ヘッドが重く、とっさにラケットがでないためボレーがしにくい。
「トップライト」メリット・デメリット
- 実際の重量より軽く感じる。
- 取り回しが楽なためボレーがしやすい。
- ラケットに重量がないと打ち負ける。
【スペック:フェイスサイズ】フェイス(面)の大きさで変わるラケットの性能
フェイスの大きさは、主に次の性能に影響を与えます。
- 飛び
- 打感
- スウィートエリア(影響大)
- スピン
- コントロール
- 振り抜き(影響大)
ここでは、100inch²を基準とし、
100inch²より大きい:フェイスの大きいラケット
100inch²より小さい:フェイスの小さいラケット
としてご説明します。
「フェイスが大きい」メリット・デメリット
- フェイスの小さいラケットに比べコントロール性能が低い。
- スウィートエリアが広い。
- ガットの「たわみ」が大きいため、ボールの飛びがよい。
- ガットの「たわみ」が大きいため、スピンをかけやすい。
- 打感がぼやける。(好みもあるので必ずしもデメリットではない。)
- 大きい分、空気抵抗により振り抜きが悪いくなる。(特にサーブ)
「フェイスが小さい」メリット・デメリット
- フェイスの大きいラケットに比べコントロール性能が高い。
- しっかりとした打感(好みがあるので必ずしもメリットではない。)
- 小さい分、空気抵抗が少なく振り抜きが良い。(特にサーブ)
- スウィートエリアが狭い。
- ガットの「たわみ」が少ないため、ボールが飛ばない。
- ガットの「たわみ」が少ないため、スピンをかけにくい。
現在市販されているラケットで、フェイスが小さい部類に入るのは93inch²〜98inch²になりますが、以前は90inch²、さら小さい85inch²のラケットもありました。
昔は95inch²を「ミッド(MID)」と言っており、今では標準的なサイズとなった100inch²前後を「ミッドプラス(MIDPULS)」と呼ぶのはこの名残ですね。
また、最近110inch²を超えるフェイスのラケットは少なくなってきており、104〜110inch²のラケットを「オーバーサイズ(OVERSIZE)」としてラインナップに加えているメーカーが多いです。
【スペック:フレーム厚】フレームの厚さで変わるラケットの性能
フレームの厚さは、主に次の性能に影響を与えます。
- 飛び(影響大)
- 打感(影響大)
- コントロール
- 振り抜き
ここでは、23〜24mmを基準とし、
24mmより厚い:厚いラケット
23mmより薄い:薄いラケット
としてご説明します。
「フレームが厚い」メリット・デメリット
- ラケットの剛性が高くなりパワーロスが少ないため、スイングスピードが遅くても飛ぶ。(軽くて飛ぶラケットにできる。)
- 剛性が高い分、ボールを弾く感覚が強くなる。(「球離れ」が早いため、人によってはコントロールしにくいと感じる。)
- 当てるだけでボールが飛ぶので、ボレーがしやすい。
- 剛性が高い分、打感が硬くなる。
- 薄いラケットに比べ空気抵抗が大きく、振り抜きが悪くなる。
「フレームが薄い」メリット・デメリット
- ラケットの剛性が低くなり、パワーのある人には飛び過ぎを抑える効果。
- 剛性が低い分、ラケットがしなることでボールが乗る感覚が強くなる。(「球離れ」が遅いため、人によってはコントロールしやすいと感じる。)
- 剛性が低い分、打感は柔らかくなる。
- 厚いラケットに比べ空気抵抗が小さく、振り抜きが良い。
- パワーのない人にとってはボールが飛ばない。
「軽いラケットで、よりボールが飛ぶようにするにはどうすればよいのか?」
この答えの一つが、
「フレームを厚くすることでラケットの剛性を上げ(硬くし)、打球時のパワーロスをなくす。」
であり、ラケットの軽量化が進むとともに、フレームの厚みも増してきました。
しかし、この方法のデメリットは【打感が硬くなる】、【球離れが早すぎてコントロールが難しくなる】ことで、これが苦手というかたも多くいます。
最近は反発性能の高い新素材(「グラフェン(HEAD)」や「テキストリーム(Prince)」など)が登場しており、ラケットを硬くせずに飛びを良くすることができるようになってきています。
また、各メーカーは、衝撃吸収素材の採用や、グロメットの素材や構造、新素材の配置を工夫することで、
「薄い(しなる)けど飛びの良いラケット」
「厚いけど打感の良い(ボールの乗る)ラケット」
を実現させています。
薄いラケットと厚いラケットの境界線がなくなってきてる!?
【スペック:ストリングパターン】ストリングパターンで変わるラケットの性能
ストリングパターンは、主に次の性能に影響を与えます。
- 飛び(影響大)
- 球質
- 打感(影響大)
- スウィートエリア
- スピン(影響大)
- コントロール
ここでは、「16(縦糸・メイン)/19(横糸・クロス)」と標準的なストリングパターンとし、
18/20:細かいストリングパターン
16/18:粗いストリングパターン
としてご説明します。
なお、16/19、16/18、18/20のパターン以外にも、スピンに特化した横糸の少ない18/16や16/15といったパターンのラケットもあります。
「ストリングパターンが細かい」メリット・デメリット
- ガットのたわみが少ないため、パワーのある人には飛びすぎ防止。
- 粗いパターンに比べコントロール性能が高い。
- 打感がはっきりしている。(パワーがないと硬く感じる。)
- ガットが切れにくい。
- パワーのない人にとっては、ガットのたわみが少ないためボールが飛ばない。
- ガットのたわみが少ないため、スピンをかけにくい。
- 粗いパターンに比べスウィートエリアが狭い。
「ストリングパターンが粗い」メリット・デメリット
- ガットがよくたわみ、ボールがよく飛ぶ。
- ガットがよくたわみ、スピンをかけやすい。
- 打感がマイルドになる。(ぼやけた感じになる。)
- 細かいパターンに比べスウィートエリアが広い。
- パワーある人にとっては、ボールが飛びすぎる。
- 細かいパターンに比べコントロール性能が低い。
- ガットが切れやすい。
ストリングパターンを粗くする(ガットの本数を少なくする)と、ガットの可動域(動く範囲)が広がります。
可動域が広がることにより、ガットのもつ「反発力」と「スナップバック(打球時にずれたガットが元に戻ろうとする動き)」をより利用できるようになり、
【ボールの飛びが良くなる】
【ボールにスピンをかけやすくなる】
効果があります。
ただし、ガット1本1本の動きが大きくなるため、
【コントロールにバラツキがでる】
【ガットが切れやすくなる】
というデメリットも同時に生じます。
最近はガットの通り道である「グロメット」の穴の大きさ、形、向きなどので「味付け」するのが流行り!?
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【スペック:グリップサイズ】グリップの太さが変わるラケットの性能
グリップの太さは、主に次の性能に影響を与えます。
- 取り回し
厳密にいうとスペックではありませんが、ラケット性能というよりプレーに影響がありますので、太さによるメリット・デメリットについてご説明します。
グリップが「太い」メリット・デメリット
- 手首の無駄な動きがなくなりストロークに安定感がでる。
- グリップチェンジがしにくく、ボレーの反応が遅れる。
グリップが「細い」メリット・デメリット
- 手首の可動域が広がり、繊細なショットの感覚がつかみやすい。
- 打球時のブレを抑えるため、パワーがより必要になる。
けがをしないためにも、自分にあったグリップサイズのラケットを使おう!
【スペックは同じでも要注意】ラケットの個体差について(結構大きい・・・)
実はタイトルにあるとおり、同じメーカーの同じモデルのラケットでも重量・バランスには「個体差」があります。
カタログやラケットに記載されている重量・バランスはそのモデルの「平均値」であり、±7や±5といった表記があるようにその範囲内で、同じモデルのラケットでも1本1本重量・バランスが異なるのです。
例えば、記載されている平均値より5g重いラケットと平均値より5g軽いラケットだと10gも重さが違うことになり、こうなると見た目と表示スペックは同じだけどもはや違うラケット・・・
また、メーカーによってもこの個体差の範囲が異なるので要注意です。
「せっかく同じラケットを2本揃えたのに、使用感が違いすぎて結局1本しか使ってない・・・」
という残念なことにならないように、実店舗で買う、ネットで買う、どちらも場合もきちんとしたお店であれば、実際の重量・バランス・スイングウェイトを計測し、同じラケットを2本同時に買う場合は可能な限り近い数字のものを用意してくれますので、お店で測定してもらった上での購入をお勧めします。
同じラケットを2本揃える時は気をつけよう!
【スペック表示はないけれど】スイングウェイトとRA値について
今回の記事では、カタログに記載されているスペックについて、その違いがラケットの性能にどのような影響を与えるかについてご説明しました。
今回ご説明したスペックの組み合わせにより、そのラケットの
- 【スイングウェイト】:実際にラケットを振ったときの重さ
- 【RA値】:ラケットの硬さを表す数値
が決まります。
カタログなどに載らないことが多い数値ですが、スイングウェイトとRA値はラケットの性能にはとても大きな影響を与えます。
ラケットについてより深く理解いただけるよう、スイングウェイトとRA値については別の記事にて深く掘り下げていますので、ぜひあわせてご覧ください。