【ガット(ストリング)】ガットの選びかた【素材・構造編】

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「よくわからないから安くて切れにくいやつ!」
「あのプロが○○をXXポンドで張ってるから同じセッティングで!」

なんて感じで、ガットを適当に選んじゃってませんか?

特に初心者の方は

「種類が多すぎて何を選んでいいかわからない・・・」

というかたも多いのではないでしょうか?

でも、ちょっと考えてみてください。

ボールを打つにはラケットにガットを張る必要があり、実際にボールが当たるのはラケットではなくガットです。

ラケットの性能を引き出し、自分のプレーレベルを上げるには、ラケットと自分にあったガットを張ることが重要なのです。


ここに注目!ガット選び【3つのポイント】

星の数ほど種類があるガットですが、次の【3つのポイント】に注目することで、おおよその特徴をつかむことができます。

  • 素材
  • 構造
  • 太さ(ゲージ)

【3つのポイント】を押さえてガットを選んでみたら、今よりテニスがもっと楽しくなるかもしれませんよ!


【ガットの素材】天然素材と化学繊維かの違い

ガットの「素材」による分類
  • 天然素材(牛の腸の繊維):ナチュラルガット
  • 化学繊維(ナイロン、ポリエステル等):シンセティックガット

まず最初の分類は、素材による分類で、天然素材のナチュラルガット化学繊維のシンセティックガットに分けられます。

MEMO
「ガット」とは「腸」のことを指すので、化学繊維であるシンセティックには「糸」を表す「ストリング」という呼び方が正しいようです。
ですが、素材にかかわらず一般的に「ガット」という呼び方が定着していますので、本記事では、「ガット」に統一させていただきます。

ナチュラルガット(天然素材)

  • 打感がマイルド
  • 飛びが良い
  • 良い状態が長持ちする(テンション維持性能が高い)
  • 切れやすい
  • 価格が高い
  • 性能にバラつきがある

ナチュラルガットの長所は、マイルドな食いつき良い状態が長持ちするテンション維持性能が高さです。
一方、ナチュラルガットの短所は、価格が高い切れやすい(切断耐久性が低い)と天然繊維であるがゆえの性能のバラつきです。

ナチュラルガットは、シンセティックガットでは両立が難しい「反発性」と「食いつき感」の両方を備え、かつ、切れない限り良い状態が長続きするという特性がある反面、価格が高く切れやすいというコスト面での負担があります。

安価なナチュラルガットの代表格であるバボラのトニックプラスで定価5,500円(実売価格は3,500円〜)、その他のナチュラルガットとなると、7,000円〜10,000円程度となかなかのお値段・・・

それでも、シンセティックガットではどうしても「シャープな反発性」を持つガットは当たりが硬くなり、「マイルドな食いつき感」を持つガットは飛びが良くない、という特徴になります。

シンセティックガットでは(いまのところ)再現できない、ナチュラルガットならではの「反発性と食いつき感の高次元での両立」と「テンション維持率の高さ」が、切れやすく価格が高いにもかかわらずナチュラルガットが選ばれる理由です。

ナチュラルガット、一度は試されることをおすすめします!

シンセティックガット(化学繊維)

  • ナチュラルに比べて切れにくい
  • ナチュラルに比べて性能のバラつきが少ない
  • 価格が安い
  • 初心者には「ナイロン」がおすすめ
  • 「ポリ」はメリットを享受できる人が少ない
  • ナイロンと同等の軽快な弾き感のポリは無く、ポリと同等の切れにくさを持つナイロンも無い

「安価で大量生産、ナチュラルガットの性能により近いものを」

というコンセプトで開発されたガットであり、価格的にはナチュラルガットに比べかなり安く、なおかつナチュラルガットに比べて切れにくく性能的なバラつきも少ないガットです。

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タマ(ノンプレッシャー)

シンセティックガットが登場したおかげで、ガットの価格低下と耐久性の向上が実現し、テニスが誰でも気軽に楽しめるスポーツになったとも言えるよ!

シンセティックガットは、さらに「ナイロン」「ポリ」という二つの素材グループに分けられます。

ナイロンガット

安価でナチュラルの代わりとなるガットを目指し作られた、複数本のナイロン製の繊維からなるガットで、反発性と食いつき感、テンション維持性能はナチュラルガットに及びませんが、安価でナチュラルと比べて切れにくく、基本的な性能は十分です。

初心者のかたには、まずこのナイロンガットのなかから選ぶことをおすすめします。

注意
ナイロン繊維には吸水性があるため、雨などで濡れると性能が劣化してしまいますので注意しましょう。(吸水性のないポリは劣化しません。)

ポリエステルガットなど

「ポリエステル」「ポリオレフィン」「ポリエチレン」等の素材で作られたストリングであり、素材自体の強度が高いため、ナチュラルやナイロンと比べ、断トツの「切れにくさ」を誇ります。

ただし、ナチュラルやナイロンに比べ、テンション維持性能が低い打球衝撃が強い飛びが悪いというマイナス面もあります。

ポリは比較的最近(2000年頃)からガットの素材として使用されはじめたこともあり、進化がとても速く性能がどんどん向上しています。(ナイロンに比べ、構造が単純であり素材の配合などで性能を調整しやすい。)

登場した当時のポリは、

「ただひたすら硬くて飛ばない・・・。けど切れにくいから仕方なく使う。」

という感じでしたが、最近のものは打感がかなりマイルドになり反発力を高くなっています。

昔ほど硬さを気にせず使えるようになりましたが、それでもナチュラルやナイロンに比べると打感は硬く、テンションの維持性能も高くないため、ナチュラルやナイロンだと一週間も経たないうちに切れてしまうプレイヤー向きのガットと言えます。

MEMO
シンセティックガットは日々進化しており、ポリがナイロンに近い飛び、打感を出そうとしているのに対して、ナイロンはポリに近い耐久性を出そうとしています。
今後、両者の溝がうまる革新的な技術・素材が誕生するかもしれませんが、現在は、ナイロンと同等の軽快な弾き感のポリは無く、ポリと同等の切れにくさを持つナイロンもありません。

【ガットの構造】ナチュラルガットに近いのは「マルチフィラメント」構造

「構造」による分類
  • 1本の繊維からなる単純な構造:モノ
  • 1本の太い芯に複数の細い繊維を巻きつけた構造:モノフィラメント
  • 複数の細い繊維を束ねた構造:マルチフィラメント

構造による分類は「繊維の組み合わせかた」により分けられ、

  • モノ
  • モノフィラメント
  • マルチフィラメント

の3つに分類することができます。

「モノ=単一の」「マルチ=複数の」「フィラメント=細い線状のもの」という意味で、複数の繊維を束ねたものを「マルチフィラメント」と呼びます。

モノ・モノフィラメント

  • マルチフィラメントと比べて反発力が高い
  • マルチフィラメントと比べて切れにくい
  • マルチフィラメントと比べて打感が硬い

マルチフィラメントと比べて、反発力が高いく切れにくい一方、打感が硬いという特徴があります。

1本の繊維からなる単純な構造を「モノ」、1本の太い芯に複数の細い繊維を巻きつけた構造を「モノフィラメント」と呼びます。

ポリはモノ構造が多く、ポリの断面が多角形のいわゆるスピンガットもこの構造になります。(素材を押し出す口金を円から多角形に変更)

マルチフィラメント

  • モノと比べて衝撃吸収が高く打感がマイルド
  • モノと比べて弾きが悪い
  • モノと比べて切れやすい
  • 「マルチフィラメント構造のナイロンガット」が一番ナチュラルガットに近い感覚を味わえる

モノ・モノフィラメントと比べて、衝撃吸収性が高く打感がマイルドである一方、弾きが悪く切れやすいという特徴があります。

ラケット面にボールが乗る「ホールド感」がありボールコントロールに安心感が生まれる一方、モノに比べて伸縮のスピードが遅く弾きが鈍くなりがちです。

強いボールで打ち合うことが少なくそれほど耐久性を求めないかたには、一番ナチュラルガットに近い感覚が味わえる「マルチフィラメント構造のナイロンガット」がオススメです。

https://ijuststarted.com/wp/wp-content/uploads/2019/11/tama_s-1.png
タマ(ノンプレッシャー)

耐久性向上のため、表面の摩耗強度を上げて切れにくくすると打感が硬くなり、せっかくのマイルド感が失われてしまうのが悩ましいところ・・・。


【ガットの太さ(ゲージ)】ポリにするなら細めのゲージがおすすめ

ガットの「太さ(ゲージ)」による分類
  • ナイロンは1.30mmくらいが標準的な太さ
  • ポリは素材自体が強くて硬いため、ナイロンよりも細めの1.25mmくらいが標準の太さ
  • ポリは細めでも太めのナイロンより切れにくいので、ポリにするなら細めがおすすめ

ガットの太さ(ゲージ)は、ボールの弾き、打感、切れやすさ、スピンのかけやすさなどに影響をあたえます。

細いゲージ

  • 弾きの強いシャープな打感でボールの伸びが良い
  • スピンがかけやすくなるが切れやすい
  • ダブルスメインのプレイヤー、ボレーヤー向け

太いゲージ

  • マイルドな打感でホールド感がありストロークが安定する
  • 反発力は弱くなるが切れにくくなる
  • シングルスメインのプレイヤー、ストローカー向け

【要注意】「切れない=耐久性が高い」ではない!ガットにも賞味期限がある

ガットの【賞味期限】とは?
  • 切れなくても伸びる(ゆるむ)のが速ければ、それは「切断耐久性」が高くても【賞味期限が短い】ガット
  • 切れやすいけれど、切れる寸前まで快適に打てるということであれば、「切断耐久性」が低くても【賞味期限が長い】ガット

「ガットの耐久性」というと、つい「切れるまでの期間が長いこと」と捉えがちですが、実はそうではありません。

ガットにも美味しさを味わえる【賞味期限】はあるんです。

「切れない=切断耐久性が高い」と「伸びない(ゆるまない)=テンション維持性能が高い」は全く別に考える必要があります。

切れなくても伸びる(ゆるむ)のが速ければ、それは「切断耐久性」が高くても【賞味期限が短い】ということになります。

逆に、切れやすいけれど、切れる寸前まで快適に打てるということであれば、「切断耐久性」が低くても【賞味期限が長い】ということになります。

「切断耐久性」の高さはポリが断トツで、【賞味期限】の長さではナチュラルガットが優れています。


【おせっかい】ポリの賞味期限はかなり短い。切れなくても張り替えよう!

ポリの最大のメリットは、なんといっても切断耐久性の高さです。

ナイロンだと数日で切れてしまうような学生プレイヤーなどにとってはとてもありがたいガットです。

ただ、ポリはナイロンやナチュラルに比べて【賞味期限がかなり短い】 という特徴もあります。

もともと、ナイロンやナチュラルに比べて硬く飛びが良くないので、賞味期限が過ぎてしまうと、

【ただ硬いだけで全然飛ばないガット】

になってしまいます。

そうすると、無理にボールを飛ばそうと力んでしまい怪我の原因にもなります。

なので、毎日テニスをするわけではなく、数週間でガットが切れない人にとっては、賞味期限の短く飛ばないガットであるポリを選ぶメリットがあまりないと言えます。

「ポリに変えてから何ヶ月ももつようになった!」

というかたは、要注意です。

ただし、ポリに比べ賞味期限の長いナイロンであっても、3ヶ月もすれば性能は劣化しますので、切れていなくても張り替えることをおすすめします。

ガットは張り上げた直後から時間の経過とともに少しずつ伸びていきます。一般的には張り上げ後、1度も使用していなくとも約3カ月でガット本来の持つ反発性能が失われてしまいます。この反発性能を失ったコンディションではボールスピードが落ちるだけではなく、ボールに十分な回転を与えることができません。
また、打球時の振動が多く発生するため手首や肘を痛める原因にもなり得ます。プレイ頻度の高いプレイヤーはガットの消耗が速いため、顕著にこれらの現象が発生します。ゴーセンは最適なガットコンディションでプレイするためにも、最長3ヵ月に1度の張り替えを推奨します。

【ガットの張り替え目安は最長で3ヵ月】「GOSEN ガットの基礎知識」より引用 http://www.gosen-sp.jp/aboutgut/index.html

【ハイブリッド】第4の選択肢

「ナチュラルやナイロンではすぐに切れてしまうけど、ポリは硬すぎて・・・」

という場合、メイン(縦糸)とクロス(横糸)で張るガットの種類を変える

【ハイブリッド】

という方法があります。

プロが導入し、一気に一般プレイヤーにも広まったハイブリッドは、メイン(縦糸)とクロス(横糸)の組み合わせで様々なアレンジが可能です。

各メーカーから、はじめからハイブリッド用に2種類のガットが入ったパッケージも販売されています。

様々なパターンがあるハイブリッドについては、次の記事で詳しくご紹介していますのであわせてどうぞ!