「柔らかいラケットがいい。」
なんて誰かが言ってるのを聞いたこと、ありますよね?
ラケットに対する「柔らかい」・「硬い」という表現はあたりまえのように使われていますが、同じ1本のラケットをある人は「柔らかい」と感じ、別の人は「硬い」と感じることも実は良くあります。
人によって感じ方が正反対のこともあるんだにゃ〜
そこで今回は、ラケットの「柔らかさ」について考えてみました。
ラケットの「柔らかさ」ってなに?
目次
柔らかいラケット その1:打球感(演出された柔らかさ)
ラケットに対して「柔らかい」と表現する場合に指しているもののひとつに
【打球感】
があります。
これは以下の特徴を感じられるラケットを「柔らかい」と表現しているケースで、柔らかい・硬いの評価が分かれにくく誰もが感じることのできる「わかりやすい柔らかさ」です。
- 打球時の衝撃が少ない。
- ボールが面に食いつく感触が強い。(「乗る」と表現する人もいます。)
実は「柔らかい打球感」は、剛性が高い硬いラケットでも感じることができる
【演出された柔らかさ】
と言えます。
剛性が高く硬く作られてるけど、打球感は柔らかく感じるラケットもあるからな。
各メーカーは、軽量化しながらも面の安定性が高く少ない力でボールがよく飛ぶラケットを、フレームを「厚く」し剛性を高める(固くする)方法で開発してきました。
いわゆる「厚ラケ」です。
しかし、フレームを厚くすることでラケットの剛性が上がるのと引き換えに「打球時の衝撃が大きくなる」ことと「球離れが早くなり打球のコントロールが難しく感じる」ことが課題でした。
最近では、ラケットの剛性を上げることのデメリットを解消するため、フレームやグリップの内部に衝撃吸収効果の高い素材を配置したり、グロメットの素材や構造を工夫することで、打球時の衝撃を抑えるとともに面にボールが食いつく感触をつくり、硬いラケットなのに打球感を「柔らかい」と感じられるラケットが増えています。
- ヨネックス Eゾーン 100
- バボラ ピュアドライブ 2018
- ウィルソン ウルトラ 100
また、ラケットに張る「ガット(ストリング)」の種類やテンション(張る強さ)でも、打球感を柔らかくすることができます。
飛びのいいラケットは打球感がイマイチ・・・
というのはもう昔の話!?
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柔らかいラケット その2:しなり(ラケットそのものの柔らかさ)
もうひとつの「柔らかさ」は、インパクトの瞬間に感じることのできるラケットの
【しなり】
を柔らかいと表現したものです。
「しなり」は
【ラケットそのものの柔らかさ】
とも言えます。
実は、このラケットのしなりによって感じられる柔らかさは、人によっては柔らかさではなく「硬さ」に感じることがあるのです。
どういうこと??
- 剛性が低いため「ねじれ」による面ブレが生じ衝撃が大きくなる。
- 打球時の衝撃が少ないスウィートスポットが狭い。
しなりを強く感じるラケットは大抵フレーム厚の「薄い」ラケットです。
フレーム厚の薄いラケットは厚いラケットに比べ剛性が低いことが多く、打球時にラケットが柔らかくしなると同時に「ねじれ」によるパワーロスが生じ、ボールが飛ばない、振動が大きい、面がブレやすいといった特徴(スウィートスポットを外したときは特に)があり、これを「硬い」と感じる人がいるのです。
薄いラケットは面の安定性を高めるために重量が重いものが多く、十分なスイングスピードがありラケットに余分なパワーを必要としない上級者に好まれます。
さらに、上級者が好む振り抜きの良さ(スイングスピード)と高いコントロール性能をラケットに求めると、面が小さくなりスウィートスポットも狭くなります。
よって、ラケットの「しなり」を「柔らかさ」と感じるには、重いラケットを十分なスイングスピードで振ることのできるパワーと常にスウィートスポットで打てる技術が必要になります。
- ウィルソン ブレード 98 V7.0
- ダンロップ CX200ツアー
- ヘッド グラフェン360+プレステージ MP
しなりによる柔らかさは一度ハマると抜け出せない!?
打球感のほかにあまりメリットが無いように感じる「しなり」ですが、
「ボールの飛距離をコントロールをしやすい」
という最大のメリットがあります。
なので、コントロールのしやすさを重視するプロや上級者は、薄くてしなるラケットを面の安定性を高めるために重量を重くして使用していると考えられます。
「RA値」はラケットの「硬さ」を表す数値
「柔らかさ(硬さ)はラケット選びの重要なポイントだと思うけど、試打以外に比較する方法はないの?」
と思われるかたも多いのではないでしょうか?
実は、ラケットの硬さ(剛性)数値化した
【RA値】
という数値があるんです。(海外では【Stiffness】と記載されることもあります。)
このRA値が「低い」ほど「しなりが強く柔らかい」ラケットと言えます。
硬い・柔らかいの目安は以下の通りです。
- RA値70以上:硬いラケット
- RA値65以下:柔らかいラケット
なお、フレームが厚くラウンド形状(丸型)のラケットはRA値が高く、フレームが薄くボックス形状(角型)のラケットはRA値が低いことが多いです。
RA値の高い代表的なラケットを挙げると、
- ウィルソン ウルトラ 100 V3:RA73(ガットを張り上げた状態)
- バボラ ピュアドライブ 2018:RA71(ガットを張り上げた状態)
- ヨネックス イーゾーン 100:RA69(ガットを張り上げた状態)
逆にRA値の低いラケットは、
- ダンロップ CX 200ツアー:RA63(ガットを張り上げた状態)
- ヘッド グラフェン360+ プレステージ MP:RA61(ガットを張り上げた状態)
- ウィルソン クラッシュ100:RA55(ガットを張り上げた状態)
などがあります。
RA値はラケットの硬さを比較するうえで非常に役に立つ数値ですが、公表しているメーカーは少ないため、公表されていないラケットのRA値は、測定機器を置いているショップで計測するか、計測した数値を掲載している海外の情報サイトで調べることになります。
メーカーが公表していないラケットでも、インターネットでラケット名とRAをキーワードに検索すれば、掲載サイトによって多少のバラツキはありますが、それらしいRA値は知ることができます。
ガットが張られている状態で計測したRA値は、ガットが張られていない状態で計測したRA値より低くなると言われています。
【RA TEST】という機械で測定する値だから【RA値】!
バボラ(Babolat)とダンロップ(DUNLOP)はラケットのRA値をスペックとして公表しているよ。
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トレンドは「全部入り」!?【軽くてよく飛ぶ面安定性の高い「しなる」ラケット】
これまで、「しなりによる柔らかさ」を味わうためには、飛びと軽さを犠牲にして薄く重たい上級者向けのラケットを使うしかなかったのですが、最近はラケット素材の高性能化や技術の進歩により、状況が変わってきているように感じます。
「グラフェン(ヘッド)」や「テキストリーム(プリンス)」などの高性能カーボン素材、しなりを生むカーボンの編み方「FREE FLEX(ウィルソン)」、グロメット加工など、素材・技術の進化によりこれまでは実現し得なかった
【軽くてよく飛ぶ面安定性の高い「しなる」ラケット】
が登場しています。
2019年2月に発売された、ウイルソン クラッシュ100のRA値55は、他のメーカーのどのラケットと比べても群を抜いて低く、フレーム厚が24mm均一であることを考えると、これまでの常識では考えられない低さです。
それでいて、高い剛性による面安定性が売りのウイルソン「ウルトラ」シリーズ並に面安定性が高いというのだから驚きです・・・。
とはいえ、しなりが苦手な人も当然いるんだにゃ〜
おそらく、これからしばらくのあいだは、
【ラケットの低RA値化】
という傾向が続き、フレームの厚いラケット、薄いラケットそれぞれの良さを残しながら、境界線があいまいになっていくのかもしれません。
数年後には、今では考えられないラケットが誕生しているかも!?
本記事は「ラケットの柔らかさ」に絞ってご説明しましたが、スペックの違いがラケットの性能にどんな影響を与えるのかについて、以下の記事でご説明していますので、あわせてどうぞ!