なお、9月20日に開催日程を延期した全仏オープン、8月31日からの全米オープンは今のところ【開催する予定】となっています。
今回はATP(男子プロテニス協会)を中心とした男子プロテニスツアー、ATPツアーの仕組みについてご紹介します。
2020年のシーズンは、グランドスラム(4大会)、ATPマスターズ1000(9大会)、ATP500(13大会)、ATP250(38大会)、Next Gen ATPファイナルズ(21歳以下対象の最終戦)、Nitto ATPファイナルズ(年間最終戦)、デビスカップに加え、2020年シーズンから新設されたATPカップ(国別対抗戦)と東京オリンピックが開催されるこれまで以上に過酷なシーズンとなっています。
1シーズンをフルに戦うと、次シーズンまでの間隔はたったの1ヵ月しかないんだよ・・・
目次
ATP、WTA、ITFの違いと役割
プロテニスの試合を管理している国際的な組織はATP(男子プロテニス協会)の他にも、WTA(女子テニス協会)、ITF(国際テニス連盟)があります。
- ATP(男子プロテニス協会):男子プロテニス選手の権利・利益を保護するために設立された団体。男子のプロテニスツアー・ランキングを管理する。
- WTA(女子テニス協会):男女の賞金格差を是正するため創設された女子選手だけのプロツアー「バージニアスリム・ツアー」を原型として創設された団体。女子のプロテニスツアー・ランキングを管理する。
- ITF(国際テニス連盟):ATP、WTAの下部トーナメント、デビスカップ、フェドカップ、Jrの国際大会、オリンピック、車椅子テニス大会、シニア大会などを管理するテニスの国際統括団体。
ATPは男子プロテニスツアーを、WTAは女子プロテニスツアーを統括しており、男子の場合はATPランキング、女子の場合はWTAランキングが世界ランキングということです。
ITFはATP、WTAツアーの下部トーナメント、デビスカップ、フェドカップ、Jrの国際大会、オリンピック、車椅子テニス大会、シニア大会などを主催・管理・運営するテニスの国際統括団体です。
選手たちは、ITF主催の下部トーナメントでITFランキングポイント獲得し、ATPランキングポイントを獲得できるATPチャレンジャー、ATPツアーの出場を目指します。
いきなりATPツアーの大会に出られるわけじゃないんだにゃ〜
ATPツアーのグレード【マスターズ1000から250まで】
【グランドスラム(四大大会)】はATPではなく開催国のテニス協会が主催(ITF公認)する大会。
いわゆる「ATPツアー」と呼ばれる大会は
- ATPマスターズ1000
- ATP500
- ATP250
の3つのグレードに分かれています。
ちなみに、グランドスラム(四大大会)と呼ばれる、全豪オープン、全仏オープン、ウインブルドン選手権、全米オープンは、ツアーでもっとも多くのATPランキングポイントを獲得できる大会ですが、ITFと開催国のテニス協会が主導して開催している大会のため、ATPが管轄するATPツアー大会には含まれません。
大会のグレードにより獲得できるATPランキングポイントおよび賞金に差があり、ランキングの低い選手はグレードの高い大会に出場できません。
ランキングが低くメインドロー(本戦)に入れない選手は予選からの出場ですが、予選にも出場することができないランキングの場合は、より下のグレードの大会や下部ツアー大会で結果を残してATPランキングポイントを獲得し、ATPランキングを上げる必要があります。
ATPツアーのカテゴリーには含まれない下部ツアーとして「ATPチャレンジャーツアー」があります。
グランドスラムまでは果てしなく遠い道のりだね・・・
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グランドスラム(全豪・全仏・ウインブルドン・全米)【年間4大会】
ITF公認の大会で開催国のテニス協会などが主催する全豪オープン・全仏オープン・ウィンブルドン選手権・全米オープンの4つの大会を「グランドスラム」と呼びます。
グランドスラムは年間4大会しか開催されない世界最高峰のテニス大会で、シングルスメインドロー数(本戦出場選手数)は128とツアー最大の規模で行われます。
獲得できるATPランキングポイントはツアー大会でもっとも多く、優勝者には2000ポイントが与えられます。
シングルス優勝賞金は超高額で、全豪・全仏・ウインブルドンで約3億円、全米は約4億円となっています。
グランドスラムの賞金は年々増えているぞ!
ATPマスターズ1000【年間9大会】
グランドスラムに次ぐ規模の大会で、年間9大会開催されます。
「ATPツアー」カテゴリーの最上位に位置する大会で、「マスターズ」または「ATP1000」とも呼ばれます。
優勝者には1000ポイントのATPランキングポイントが与えられます。
ATPマスターズ1000のシングルスメインドロー数は96・56・48と3種類ありますが、ダブルスのメインドロー数は9大会すべて32です。
「コミットメントプレーヤー(前年のATPランキングが30位以内だった選手)」と呼ばれる上位シード選手は、ATP1000 モンテカルロ以外のマスターズ8大会に出場する義務があるため、ATPマスターズ1000にはトップ10選手を始めランキング上位選手がそろって出場します。
そのため、
1回戦からトッププレイヤー同士の対戦となる極めてレベルの高い大会
です。
実力伯仲の好カードが多いのがマスターズ1000の特徴だよ!
なお、出場義務は以下の条件を満たすことで免除されます。
- 通算600試合以上出場(1月1日のシーズン開始時点)
- 12年間以上のプロ経験(ATPランキングポイントを獲得できる大会に12大会以上出場した年から)
- 30歳以上(1月1日のシーズン開始時点)
キャリアの長いベテラン選手を優遇する内容となっていますが、ランキング維持のためにはレベルの高い大会で結果を残し続ける必要があることにはかわりはありません。
かなり厳しい条件だにゃ〜
ATP500【年間13大会】
優勝者には500ポイントのATPランキングポイントが与えられるATPマスターズ1000に次ぐグレードの大会で、2020年シーズンは年間13大会開催されます。
ATP500のシングルスメインドロー数は48・32と2種類ありますが、ダブルスのメインドロー数は13大会すべて16です。
ATPマスターズ1000と異なり、同じ週に異なる2つの大会が開催されることもあります。
ちなみに日本で開催されている「楽天ジャパンオープン」はこのカテゴリーの大会です。
コミットメントプレーヤーは、ATP500の13大会中4大会に出場する義務があり、その4大会のうち1大会は全米オープン後の「チャイナ・オープン(北京)」、「楽天ジャパンオープン(東京)」、「スイス・インドア(バーゼル)」、「エルステ・バンク・オープン(ウィーン)」のいずれかでなければなりません。
ATP250【年間38大会】
優勝者には250ポイントのATPランキングポイントが与えられるATPツアーとしては最もグレードの低い大会で、2020年シーズンは年間38大会開催されます。
ATP250のシングルスメインドロー数は48・32・28と3種類ありますが、ダブルスのメインドロー数は38大会すべて16です。
なお、同じ週に異なる3つの大会が開催されることがあります。
【ATPツアーへの登竜門】ATPとITFの下部ツアー
ATP250よりグレードの低い大会は、ATPツアーではなく「下部ツアー」とよばれるカテゴリーの大会となります。
ATPチャレンジャー
「ATPツアー下部大会」とも呼ばれるATPツアーより下のカテゴリーで、年間150以上の大会が世界各地で開催されています。
不調やけがで一時的にランキングが落ちた調整目的の世界ランキング50位前後の選手、グランドスラム本戦からの出場を狙う確実にATPランキングポイントを獲得したい100位前後の選手、「ATPツアー」大会に出場できないランキングの選手などが出場しています。
ATPチャレンジャーはATPツアーには含まれませんが、ATPランキングポイントが付与される大会で、優勝で獲得できるランキングポイント数は50~125の6段階に区切られています。
獲得できる賞金は優勝(シングルス)でも最高で230万円程度であり、ATP250大会に比べると格段に安い賞金額です。
また、食事・移動などあらゆる面で高待遇なATPツアーと違い、多くが自己負担です。
それでもランキングポイント獲得のために、ランキング50位前後の選手が出場することもあるのですから、ATPツアー以上に厳しいと言えるかもしれません。
ATP250とチャレンジャーでは賞金額が「雲泥の差」で、ATP250は賞金の少ない大会でもシングルス優勝賞金は約1,000万円なんだよ!
ITFワールドテニスツアー(旧フューチャーズ)
ATPチャレンジャーより下のカテゴリーで、ATPではなくITFが管轄する小規模な大会です。
年間約600という数の大会が世界中で開催されます。
2018年までは「ITFフューチャーズ」、「ITF Men’s Circuit」という名称で開催されていましたが、2019年に正式名称が「ITF Men’s World Tennis Tour」となり、新たに「ITFランキングポイント」が新設されました。
2019年シーズンまではITFワールドテニスツアーの大会でもATPランキングポイントが付与されましたが、2020年シーズンよりATPランキングポイントは付与されずITFランキングポイントのみ付与されます。(2020.1.22訂正:2020年シーズンも引き続きATPランキングポイントが付与されることになりました。)
ITFワールドテニスツアーは、賞金の金額(総額)によって2つのカテゴリーに分けられています。
- M15:15,000ドル
- M25:25,000ドル
【ツアー最終戦】2つのATPファイナルズ
1月に始まり世界中を転戦する厳しいツアースケジュールの最後には、シーズン中の成績により選ばれたプレイヤーだけが参加できる、特別な2つの大会が開催されます。
21歳以下の獲得ATPランキングポイント上位7選手と主催者推薦1選手が出場できる「Next Gen ATPファイナルズ」と、年間の獲得ATPランキングポイント上位8選手(ダブルス8ペア)が出場できる「Nitto ATPファイナルズ」です。
新シーズン開始とともに全選手が0ポイントからスタートする「ATPレースランキング」というATPファイナルズの出場権を争うランキングで出場選手が選ばれます。
Nitto ATP ファイナルズ
Nitto ATPファイナルズは、ATPレースランキングの上位8名(ダブルス8ペア)が出場することができる特別な大会です。
勝利するごとにATPランキングポイントが加算される大会で、ラウンドロビン(予選グループリーグ)から全勝で優勝した場合は1,500ポイントを獲得できます。(Next Gen ATPファイナルズはATPランキングポイントが付与されません。)
また、シングルスでの全勝優勝した場合の賞金は「約3億円」になり、グランドスラム大会の優勝賞金と変わらない破格の金額です。
ポイントも賞金もとっても大きな「ボーナス」だにゃ〜
ATPツアーはNitto ATP ファイナルズをもってシーズン終了ですが、実はATPファイナルズが終了してすぐに、18カ国が1カ所に集まり世界一を争うIFT主催の国別対抗戦「デビスカップ・ファイナルズ」が開催されます。
2020年シーズンのデビスカップ・ファイナルズが終了するのは11月29日、約1ヵ月という大変短いオフシーズンのあと、年があけてすぐにまた長い新シーズンが始まります。
実際に「オフ」になる期間は1カ月もないんだよ。
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【成功できるのは一握り】華やかなのはトップだけ
2019年シーズン終了時点でATPランキングポイント(シングルス)を保有する「ATPランカー」は1,900人以上で、その半分は保有ポイント10ポイント未満の選手です。
ちなみに、2019年シーズン終了時点の保有ポイントが501ポイントの日本のダニエル太郎選手でも、ランキングはグランドスラム本戦ストレートインが微妙なラインの110位です。(結局、予選からになりました。)
ランキング40位以内の選手は年間獲得賞金だけで1億円を超えており、スポンサー契約などによる賞金以外(選手によっては賞金以上)の収入も得ることができますが、ランキング100位程度の選手の年間獲得賞金額は2,000万円弱、250位の程度の選手だと日本のサラリーマンとあまり変わらない500万円弱となっています。
このなかから年間のツアー遠征費用や帯同するコーチなどの報酬を支払うことになるわけですから、賞金だけで生計を立てられるのは毎回グランドスラム本戦に出場するような選手だけ、という非常に厳しい世界です。
メディアで報道されるプロテニスツアーは、目もくらむような額の賞金と華やかなセレブの世界だけど、それはほんの一握りの選手たちだけなんだ。
転戦する資金を稼ぐためにも、早くチャレンジャーレベルから抜け出して、賞金額の高いATPツアーレベルに上がる必要があるんだ!
ATPの公式サイトをチェックしてみよう!
ATPツアーのルールは「オフィシャルルールブック」に定められています。
オフィシャルルールブックはATPの公式サイトにPDFデータで掲載されていますので、ルールに興味のある方は一読されることをおすすめします!
ルールブックはすべて英語ですが「Google翻訳」を使えばなんとか解読できます。
今回はATPツアーの仕組みについてご紹介しましたが、女子のプロテニスツアーWTAツアーの仕組みやランキングシステムの仕組みについては、別の記事でご紹介していますのであわせてご覧ください。