なお、9月20日に開催日程を延期した全仏オープン、8月31日からの全米オープンは今のところ【開催する予定】となっています。
今回はテニスの「世界ランキング」はどうやって決められているのか?というお話です。
ATPツアー(男子プロテニス)とWTAツアー(女子プロテニス)はどちらも、出場した大会の結果によって獲得できる「ランキングポイント」によって世界ランキングが決まる仕組みですが、獲得したポイントを単純に合計しているわけではありません。
また、ATPツアーとWTAツアーではランキングに関するルールが少し異なります。

知ってるようで知らにゃいかも・・・
- ATP(男子プロテニス協会):男子プロテニス選手の権利・利益を保護するために設立された団体。男子のプロテニスツアー・ランキングを管理する。
- WTA(女子テニス協会):男女の賞金格差を是正するため創設された女子選手だけのプロツアー「バージニアスリム・ツアー」を原型として創設された団体。女子のプロテニスツアー・ランキングを管理する。
今回ご紹介するランキングポイントの集計方法や限られたトップ選手に与えられる特権など、ランキングの仕組みがわかるとテニス観戦がもっと楽しくなりますよ!

上位選手の試合出場義務、けがからの復帰時に利用されるランキング上の救済措置についての説明もあるよ!
「もっと詳しく知りたい!」というかたは、ATPおよびWTAの公式サイトに掲載されている「オフィシャルルールブック」に詳細が記載されていますのでチェックしてみてください。(英文ですが「Google翻訳」を使えば何となくわかりますよ!)
- 【ATP公式サイト】ATP Official Rulebook(「IX. FedEx ATP Rankings」がランキングに関する部分です。)
- 【WTA公式サイト】WTA Official Rulebook(「2020 Official Rules (PDF)」(重い!)141ページからの「Ⅷ WTA RANKING SYSTEM」がランキングに関する部分です。)
目次
ランキングについての予備知識
ランキングポイントを獲得できる大会は決まっている。
ATPツアーとWTAツアーのランキングはそれぞれ、出場大会の結果により獲得した「ランキングポイント」で決まりますが、どんな大会でもランキングポイントを獲得できるわけではありません。
ランキングポイントを獲得できる大会は、グランドスラム、ATPおよびWTAのツアー、ATPおよびWTAの下部ツアー、ITFの下部ツアーです。
なお、デビスカップ、フェドカップ、オリンピック、エキシビジョン大会ではランキングポイントを獲得することはできません。
獲得できるポイントは大会のグレード・戦績で決まっている。
獲得できるランキングポイントは、大会のグレードおよび戦績によって決まっています。
ATPツアーを例に説明すると、ATPマスターズ1000大会の優勝者がもらえるポイントは1000、ひとつ下のグレードであるATP500大会の優勝者は500と決まっています。

グレードの高い大会は獲得できるポイントが多いが、ランキング上位選手がこぞって出場するから勝ち残るのは難しいぞ。
ランキング更新のタイミング
ATPおよびWTAのランキングは、「毎週月曜日」に更新・発表されます。
ATPツアー大会およびWTAツアー大会は通常、1週間単位で行われ(決勝戦は日曜日)、獲得および消失したポイントが翌月曜日に更新されるランキングに反映される仕組みです。

ドロー数が多く大会の開催期間が週をまたぐグランドスラム大会とATPマスターズ1000インディアンウェルズ大会、マイアミ大会の開催期間中の月曜日はランキング更新がないんだよ!
シングルスとダブルスのランキングは別
ATPおよびWTAのランキングにはシングルスランキングとダブルスランキングがあり、シングルスランキングはシングルスで獲得したポイント、ダブルスランキングはダブルスで獲得したポイントによって決まります。

ダブルス専門の選手もたくさんいるんだにゃ〜
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ランキングポイントの集計方法【ちょっと複雑】
ランキングポイントの集計は、獲得したポイントを単純に合計するわけではなく一定のルールに基づき行われます。
集計方法は、ATPとWTAで多少異なります。
ATPのランキング
ATPのランキングには「ATPランキング」と「ATPレースランキング」の2つがあります。
ATPツアーでの「世界ランキング」にあたります。
ATPランキングはシーズンが変わってもそのまま引き継がれ、直近52週間(約1年間)に出場した大会での獲得ポイントが多かった上位18大会の合計ポイントで決まります。

合計が同じポイントの選手がいた場合はどうするのかにゃ?

2人以上の選手の合計ポイントが同じだった場合は、グランドスラム、ATPマスターズ1000、ATPファイナルズの合計ポイントが高い順にランキングが決まるんだよ!
獲得したポイントのうち、直近52週以前のポイントは消失し、52週以内に獲得した上位18大会のポイント合計でATPランキングが決まります。
つまり、ランキングを維持するためには前年以上の結果を出し続ける必要があるのです。

ランキングは上げるよりも維持するほうが難しい!?
ATPランキングは「獲得ポイントが多かった上位18大会」により決まりますが、この「上位18大会」には例外があります。
ひとつは、【グランドスラム大会(年間4大会)とATPマスターズ1000(モンテカルロ大会を除く年間8大会)の本戦に出場した場合、獲得ポイントに関係なく強制的に集計対象の18大会に含まれる】ことです。
ふたつめは、【年間成績上位8選手によって行われるシーズン最終戦「ATPファイナルズ」で獲得したポイントは、上位18大会の合計ポイントに「19大会目のポイント」として加算する】ということです。
レギュラーシーズン終了後にシーズン成績上位8選手だけが出場できる特別な大会「ATPファイナルズ」への出場権をかけて競うランキングです。
ATPランキング同様、ATPランキングポイントにより決まります。
ATPレースランキングはその年の大会だけがポイント集計対象となるため、前年のポイントは引き継がれず、シーズン開始時はすべての選手が0ポイントからのスタートです。

レギュラーシーズン終了時には「ATPランキング」と「ATPレースランキング」のポイント集計対象期間が同じになり、どちらのランキングも同じ順位になるんだ!
WTAのランキング
WTAのランキングもATPランキングと同様に、「WTAランキング」と「WTAレースランキング」の2つがあります。
WTAツアーでの「世界ランキング」にあたります。
WTAランキングは、シーズンが変わってもそのまま引き継がれ、直近52週間(約1年間)に出場した大会での獲得ポイントが多かった上位16大会(ダブルスは11大会)の合計ポイントで決まります。

ATPランキングは上位18大会、WTAランキングは上位16大会の合計ポイントで決まるのか。
ATPランキングと同様に、1週間ごとに直近52週以前のポイントは消失し、52週以内に獲得した上位16大会のポイント合計が計算されるため、前年出場した大会では、その時以上の成績を残さないとポイントは増えない仕組みになっています。
なお、ランキングポイントの集計対象となる上位16大会について、グランドスラム(年間4大会)とプレミアマンダトリー(年間4大会)の本戦に出場した場合は、獲得ポイントに関係なく必ず集計対象の16大会に含める必要があります。
また、年間成績上位8選手によって行われるシーズン最終戦「WTAファイナルズ」に出場し獲得したポイントは、上位16大会の合計ポイントに「17大会目のポイント」として加算されます。
レギュラーシーズン終了後にシーズン成績上位8選手だけが出場できる特別な大会「WTAファイナルズ」への出場権をかけて競うランキングです。
WTAランキングと同様に、WTAランキングポイントにより決まります。
WTAレースランキングはその年の大会だけがポイント集計対象となるため、前年のポイントは引き継がれず、シーズン開始時はすべての選手が0ポイントからのスタートです。
上位選手には特別な「義務」がある!【特権も】
ATPツアーおよびWTAツアーのルールには、ランキング上位選手だけに課せられる義務が定められています。
そのなかで最もランキングに影響するのは
「ATPやWTAが指定する大会に出場する義務」
です。
出場義務の内容と対象となる選手のランキングは、ATPとWTAで異なります。
ATPツアーにおける上位選手の大会出場義務
前年レギュラーシーズン終了時点のATPランキング(シングルス)が30位以内の選手は「コミットメントプレーヤー(Commitment Player)」と呼ばれ、ATPが指定する以下の大会に出場する義務があります。
- グランドスラム4大会すべて
- ATPマスターズ1000のモンテカルロ大会以外の8大会
- ATP500シリーズのうち4大会(その内1つは必ず全米オープン以降の大会)

これだけで16大会だにゃ〜

グランドスラム4大会とATPマスターズ1000の8大会は、「その成績にかかわらずATPランキングポイントの集計対象である18大会に含まれる」というルールとなっていますので、欠場により獲得ポイントが0ポイントだったとしても他の大会の獲得ポイントに置き換えることができません。(例外については後述)

TOP30の選手は、出場義務のあるレベルの高い大会で結果を残し続けなければならないから大変だな。

ある条件を満たせば、ATPマスターズ1000については、欠場してランキングポイント集計対象からも除外することができるんだよ!
- 通算600試合以上出場(1月1日のシーズン開始時点)
- 12年間以上のプロ経験(ATPランキングポイントを獲得できる大会に12大会以上出場した年から)
- 30歳以上(1月1日のシーズン開始時点)
この条件を1つ達成で1大会、2つ達成で2大会、3つすべて達成すると全8大会の出場義務が免除されます。
そして、出場義務免除により欠場した選手は、他の大会で獲得したランキングポイントを集計の対象となる18大会にあてることができます。
この条件を満たすことができるのは実績のあるベテランプレイヤーに限られますね。

実は錦織圭選手も3つの条件をすべて満たしているんだよ!
ここまでをみると厳しい義務があるだけみたいですが、コミットメントプレイヤーには他の選手にはない「特権」が与えられています。
- ATPランキングに関係なくATP500大会は本戦から出場できる。
- シーズン終了時にATPランキング12位以内の選手には「ボーナス」が支給される。
ひとつは
「ランキングに関係なくATP500大会は本戦から出場できる。」
というものです。
本来、ATPランキングが低いと予選からの出場となってしまいますが、コミットメントプレイヤーは、ランキングが下がってしまっても予選が免除され本戦から出場できるのです。

なんかずるくにゃい?
ふたつめは
「ボーナスが支給される。」
というものです。
コミットメントプレイヤーであれば、大会賞金だけでもかなりの額を稼いでいますが、ATPマスターズ1000の出場義務のある大会に7大会以上出場し、シーズン最終戦の「ATPファイナルズ」終了翌月曜日時点でATPランキングが12位以内の選手には、その順位に応じたボーナスが支給されます。

ATPランキング1位の選手に支給されるボーナスは、なんと3億円以上!
厳しい義務はあるけど、そのぶん特権も非常に大きいね!
WTAツアーにおける上位選手の大会出場義務
前年末のWTAランキングが10位以内の選手は「Top 10 Player」として他の選手と区別され、WTAが指定する以下の大会に出場する義務があります。
- グランドスラム4大会すべて
- プレミアマンダトリー4大会すべて
- プレミア5の5大会のうち4大会

Top 10 Playerは出場義務のある大会だけで12大会あり、グランドスラム4大会すべて、プレミアマンダトリー4大会すべて、プレミア5の上位成績2大会が成績にかかわらずWTAポイントの集計対象である16大会に含まれます。
もちろん、Top 10 Playerには義務が課せられるかわりに特権も与えられ、ランキングに関係なく大会の本戦から出場できます。
また、プレミアマンダトリーとプレミア5の出場要件を満たし、年末のシーズン終了時点でWTAランキングが10位以内の選手には、その順位に応じたボーナスが支給されます。

ATPは上位30人、WTAは上位10人が特別な待遇を受けられるのか。
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けがからの復帰を後押し!【プロテクトランキングとスペシャルランキング】
けがなどの理由でツアーを長期離脱してしまうと、その間も直近52週以前に獲得したポイントはどんどん減っていきランキングは一気に下降してしまいます。
そんな時の救済措置として、ATPでは「プロテクトランキング」、WTAでは「スペシャルランキング」と呼ばれる、ツアーを離脱する前のランキングをある程度考慮した実際のランキングとは異なる「特別なランキング」を使って、復帰後の一定期間大会に出場できる仕組みがあります。

けがをする前と同じレベルの大会に出られるように配慮されるんだよ!
【ATP】プロテクトランキングの仕組み
怪我などにより6カ月以上ツアーを離れた選手に対する救済処置です。
離脱前の最後に出場した大会から3カ月間の平均ランキングを、実際のランキングとは別に「プロテクトランキング」として保有し、復帰後にプロテクトランキングを使って大会にエントリーできます。
- けがなどにより6カ月以上大会(エキシビジョンを含む)でプレーしない場合に有効となる。
- プレーしない期間が6カ月以上12カ月未満の場合:9大会あるいは9カ月間、プロテクトランキングが有効となる。
- プレーしない期間が12カ月以上の場合:12大会あるいは12カ月間、プロテクトランキングが有効となる。
- ワイルドカードおよび自身のランキングを用いてプレーした大会はプロテクトランキング利用回数にカウントしない。
- プロテクトランキングの有効期間は最初の大会(エキシビジョンを含む)に出た時点から始まる。
- プロテクトランキングの有効期間中(復帰後9カ月もしくは12カ月の間)に怪我で3カ月以上離脱する場合は、有効期間を2回まで「一時停止」し復帰後に残りの期間を適用することができる。
- ツアー離脱期間が3年を過ぎた場合は、プロテクトランキングは利用できない。
【WTA】スペシャルランキングの仕組み
けがなどにより6カ月以上ツアーを離れた選手に対する救済処置です。
離脱理由には妊娠も含まれます。
ATPのプロテクトランキングとほぼ同じ仕組みですが、6カ月から12カ月の離脱の場合、スペシャルランキングが有効となる期間は「8大会あるいは12カ月間」となっており、プロテクトランキングに比べ有効期間が3カ月長くなっています。
なお、スペシャルランキングを利用できるのは、シングルスランキング375位以内もしくはダブルスランキング200位以内の選手となっています。

ちなみに、ATPの場合、プロテクトランキングを利用するには「プロテクトランキングが算出できること(離脱後の3カ月の間にシングルスもしくはダブルスのランキングポイントを保有していること)」が条件になっているよ!
選手は会費を払ってます。【メンバーシップ制度】
2020年1月20日付で、ATPランキングポイントを保持する選手はシングルスで約1,900人、ダブルスで約2,200人、WTAランキングポイントを保持する選手はシングルスで約1,300人、ダブルスで約1400人もいます。
しかし、ランキングポイントを保持する選手全員がATP・WTAから同じ扱い受けられるわけではなく、一定の条件を満たす選手のみツアーメンバーとして特典が与えられる「メンバーシップ制度」が設けられています。
ATPツアーのメンバーシップ制度
ATPツアーにおいて、シングルスランキング上位500人、ダブルスランキング上位250人に限り「ATPメンバーシップ」が与えられ、ATPメンバーシップの有無で「ATP Player Member(メンバー)」と「 ATP Registered Player(登録プレイヤー)」に区別されます。
- Division Ⅰ(ディビジョン1):メンバーシップ申請日にATPシングルスランキング200位以内もしくはATPダブルスランキング100位以内の選手
- Division Ⅱ(ディビジョン2):メンバーシップ申請日にATPシングルスランキング500位以内もしくはATPダブルスランキング250位以内の選手
「ATP Player Member(メンバー)」は会費の納入や身体検査書の提出などの義務がありますが、さまざまな特典を受けられます。
WTAツアーのメンバーシップ制度
WTAツアーのメンバーシップ制度は以下のとおりです。
- Full Menbership(正会員):過去2年間のツアーで年末のWTAシングルスランキング150位以内もしくはWTAダブルスランキング50位以内であり、直近シーズンで6回以上WTAトーナメントでプレーした選手
- Associate Membership (準会員):過去2年間のツアーで1週間以上WTAシングルスランキング750位以内もしくはWTAダブルスランキング250位以内であり、1回以上WTAトーナメントでプレーした選手
正会員と準会員の年会費はそれぞれ1,500ドル、650ドルとなっており、会員は会費を納めるかわりにさまざまな特典を受けられます。

いわゆる「協会員」!? 会費高くにゃい?
ATPとWTAの公式サイトをチェックしてみよう!
ATPツアーおよびWTAツアーのランキングに関するルールについては、それぞれ「オフィシャルルールブック」に定められています。
オフィシャルルールブックはATPおよびWTAの公式サイトにPDFデータで掲載されており、ランキング以外の項目もすべて網羅されていますので、ルールに興味のある方は一読されることをおすすめします!
ルールブックはすべて英語ですが「Google翻訳」を使えばなんとか解読できます。
なお、ATPおよびWTAの公式サイトでは、それぞれ「Rankings」メニューより、1位から最下位までのランキング保有全選手の出場大会、対戦相手やスコアを含む戦績、保有ポイントの内訳や獲得賞金などさまざまな項目を調べることができるので、時間があるときにじっくり見てみるとおもしろいですよ!

見てるといろいろ調べたくなって、ついつい長居しちゃうよ!
今回はATPツアーおよびWTAツアーのランキングの仕組みについてご紹介しましたが、大会のグレードや成績ごとのランキングポイントについては別の記事で詳しくご紹介していますので、ぜひチェックしてみてください。